有田焼と暮らす扱い方|洗う・しまう・直すで迷わないための実務

有田焼と暮らす扱い方|洗う・しまう・直すで迷わない実務

いい器を買ったのに、扱い方が分からなくて食器棚の奥にしまったまま——。そんな経験はないでしょうか。割ってしまうのが怖い、洗い方を間違えたくない。そう思うほど、器は使われなくなっていきます。

調べようとすると、今度は情報が多すぎて迷います。目止めをしろ、水に浸けろ、漬け置きは避けろ、よく乾かせ。手間がかかるものだ、という印象だけが残ります。

ただ、その情報の多くは有田焼には当てはまりません。陶器と磁器では、必要な手入れがまるで違うからです。

この記事では、洗う・しまう・直すの順に、有田焼で本当に気をつける点だけを整理します。覚えることは、思っているよりずっと少ないはずです。

この記事について

当メディアを運営するJTOPIAは、有田焼をはじめとする伝統工芸品を扱う事業者です。掲載している器の寸法・容量・重さは、すべて実際に取り扱う商品の実測値であり、カタログ表記の引き写しではありません。紹介する商品は自社の取扱品です。詳しい編集方針は運営者情報・編集方針をご覧ください。

この記事に掲載した価格は2026年8月28日に自社ECの表示と照合した税込価格です。在庫状況により変動する場合があります。

目次

器の手入れの情報はほとんどが陶器の話

有田焼 湯呑み 鶯玉。淡い緑の釉薬をかけた湯呑み
湯呑み 鶯玉/真右エ門窯

「器 手入れ」で調べると、まず出てくるのが目止めです。米のとぎ汁で煮て、生地の隙間を埋める。使う前には水に浸けておく。においが移るから漬け置きはしない。乾かさないとカビてしまいます。

どれも正しい情報です。ただし陶器(土もの)の話です。

陶器は土を焼いたもので、焼き上がっても生地に細かい隙間が残ります。だから水を吸うのです。吸うから、においも移るし、乾かなければカビもします。目止めは、その隙間を埋めるための作業です。

有田焼は磁器です。原料は陶石で、1,300度前後の高温で焼き締めます。焼き上がった生地は硬く、水を吸わないのです。

つまり、上に挙げた手入れはほぼ全部が不要ということになります。

有田焼は磁器だから要らない手入れがある

陶器と磁器の断面比較。陶器は水がしみ込み、磁器はしみ込まない
手入れ陶器有田焼(磁器)
目止めする不要
使う前に水に浸けるする不要
漬け置き避けるしてよい
乾燥よく乾かす拭けば終わり
においが移る移る移らない
カビ生える生えない

本店の商品説明にも「硬質で吸水性がなく、汚れが付きにくいためお手入れが簡単です」と書いています。売る側の宣伝ではなく、素材の性質としてそうなのです。

手持ちの器が磁器かどうか見分ける

食器棚には、有田焼以外の器も混ざっているはずです。手入れを変える必要があるので、見分け方を書いておきます。

見るところ陶器磁器
指ではじいた音にぶい音高く澄んだ音
高台(底の輪)土の色。ざらつく白い。きめが細かい
光にかざす透けない薄い部分が透ける
持った重さ厚くて重い薄くて軽い

いちばん分かりやすいのは高台を見ることです。釉薬がかかっていない部分なので、生地の色がそのまま出ています。茶色や灰色なら陶器、白ければ磁器です。

半磁器(せっ器)という中間のものもあります。判断に迷ったら、陶器として扱っておけば器を傷めることはないでしょう。

そのかわり、陶器には無い注意点が3つだけあります。金属の装飾・高台の畳付・欠けです。以下はこの3つの話だと思ってください。

あわせて読みたい器のある暮らしのはじめ方|最初に揃える4つと置き場所のつくり方

洗う

有田焼 広口マグカップ 耀変辰砂。深い紅の釉薬をかけたマグカップ
広口マグカップ 耀変辰砂/真右エ門窯

金色に見えても金とはかぎらない

金色に結晶した釉薬と、焼き付けた金属の装飾の断面比較

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。

金彩・銀彩・白金彩をあしらった器は、電子レンジに入れられません。金や銀やプラチナを焼き付けた装飾は、焼き上がったあとは本物の金属の膜です。電波を受けると膜のふちに電気が集まり、放電して火花が出ます。

「口縁に金属が回っていなければ大丈夫」と言われることがありますが、これは正しくないのです。胴に描かれた金彩でも同じことが起こります。金属がどこにあるかではなく、金属があるかどうかで決まります。

ややこしいのはここからです。金色に見えるのに、金を使っていない器があります。

釉薬そのものが金色に結晶したものです。当店で扱う真右エ門窯の「金華紋」がそれで、山吹色の結晶が花びらのように浮かびます。上絵付けの金彩ではなく釉薬の景色ですから、電子レンジも食洗機も使えるのです。

つまり見た目では判断できません。金色だから駄目とも、金色でも平気とも言えません。商品ページの記載を確かめてから使ってください。記載がなければ手洗いにする。それで器を傷めることはありません。

食洗機で欠けるのは洗剤ではなく当たり方

食洗機が使える器でも、入れ方を間違えると欠けます。原因は洗剤でも温度でもなく、器同士がぶつかることです。

  • 器と器を接触させない。洗浄中は水流で細かく振動します
  • 噴射ノズルの正面を避ける。薄い口縁に水圧が集中します
  • 倒れる置き方をしない。倒れた拍子に隣と当たります

高温乾燥のコースは、器そのものより急な温度変化が負担になります。心配なら乾燥なしで取り出して拭いてください。磁器は吸水しないので、拭けばそれで終わりです。

研磨剤入りのスポンジは使わない

磁器の表面は釉薬のガラス質で覆われています。ここに細かい傷が入ると、そこに汚れが入り込んで落ちにくくなります。

金属たわし、研磨剤入りのスポンジ、クレンザーは避けてください。柔らかいスポンジと中性洗剤で十分です。吸水しない素材なので、汚れはそもそも表面に留まっています。

金彩・銀彩の部分は特にデリケートです。擦れば削れます。指の腹でなでるくらいの力で洗ってください。

茶渋は落ちるが金彩に漂白剤は使わない

湯呑みや茶碗の内側に茶渋が付いたとき、磁器ならほぼ落ちます。生地に染み込んでいるのではなく、表面に付着しているだけだからです。

ぬるま湯に重曹を溶かして浸けておけば、たいてい取れます。漬け置きしても問題ないのは、磁器の利点です。

ただし金彩・銀彩のある器に塩素系漂白剤は使わないでください。金属の装飾が変色します。この場合は重曹か、時間をかけたぬるま湯で対応します。

油汚れも同じ考え方です。生地に染みることはないので、ぬるま湯につけておけば浮きます。力を入れて擦る必要はないでしょう。冷たい水では油が固まって落ちにくいというだけで、器の性質の問題ではありません。

毎日使う器

上の6点は、いずれも商品ページに電子レンジ・食洗機の使用可と明記されているものです。毎日使う器を選ぶなら、この記載があるものから選ぶと迷いません。

しまう

器を重ねたときに高台の畳付が当たる場所と、布を挟んだ場合の比較

器が傷つくのは重ねたときの底の輪

器の裏を見てください。底に輪の形の台があります。これが高台(こうだい)で、机に接する輪の面を畳付(たたみつき)と呼ぶものです。

畳付には釉薬がかかっていないのです。釉薬をかけて焼くと窯の棚板にくっついてしまうため、そこだけ生地を出してあります。指でなでるとざらつくのが分かるはずです。

器を重ねると、上の器のこのざらついた輪が、下の器の内側に乗ります。ヤスリを当てているのと同じことです。食器棚から出し入れするたび、少しずつ削れていきます。

買ったばかりの器の内側に、いつのまにか輪の形の傷が付いている。原因はほとんどこれです。

挟むのは紙より布

対策は単純で、間に1枚挟むだけです。厚手の布かフェルトが向いています。

キッチンペーパーや新聞紙でも傷は防げますが、紙は湿気を持つのです。洗ったあとの水気が残っていると、紙が湿ったまま器に張り付きます。磁器はカビませんが、紙のほうがカビます。

重ねるのは2〜3枚までにしてください。重ねすぎると、いちばん下の器の縁に重さがかかり、出し入れのときに欠けます。

桐箱にしまうか出しておくか

桐箱付きの器は、箱にしまうべきか迷うところです。結論から言えば、毎日使う器は出しておいて構いません。

桐箱は、湿気を通しにくく、外の湿度変化を和らげるのが利点です。長期保管や持ち運びには適していますが、毎日出し入れするには手間がかかりすぎます。箱にしまうたび紐を解くのでは、使わなくなります。

箱にしまう場合は、完全に乾いてから入れてください。水気が残ったまま密閉すると、器ではなく箱のほうが傷みます。付属のウコン布は、器を包んで擦れを防ぐためのものです。

飾って保管するという選択肢もあります。器を置く場所そのものを設計する話は、別の記事で扱っているところです。

あわせて読みたい床の間の飾り方|和モダンの家に合わせる掛ける・置く・焚くと寸法の決め方

耐震ジェルは器の底に貼らない

食器棚の地震対策として耐震ジェルを使う方がいますが、器の底に直接貼るのはおすすめしません。

畳付は釉薬のかかっていない生地です。粘着剤が染み込み、跡が残ります。剥がすときに力がかかって、高台を欠くこともあります。

地震対策は器ではなく棚のほうで行ってください。棚板に滑り止めシートを敷く、扉に耐震ラッチを付ける、重いものを下段に置く。器を固定するのではなく、器が動かない棚にするという考え方です。

貫入は割れではない

有田焼 広口コーヒーカップ 彩雲。紅から紫へ変化する釉薬のカップ
広口コーヒーカップ 彩雲/真右エ門窯

使っているうちに、釉薬の表面に髪の毛ほどの細かいひびが見えることがあります。これを貫入(かんにゅう)と呼ぶものです。

割れではありません。生地と釉薬の縮み方の違いで、釉薬の層にだけ入るひびです。器が割れているわけではないので、水は漏れません。

陶器の貫入は、生地が水を吸うため、そこから汚れや茶渋が入って色が変わっていきます。それを「育てる」と表現するのです。

磁器の貫入は色が入りません。生地が吸水しないからです。ですから磁器の貫入は、育てるものではなく最初からそういう景色として作られたものと考えてください。青磁などは、貫入そのものを見どころにしています。

買った時点ですでに貫入が入っていることもあるのです。不良品ではありません。窯から出した直後に入るもので、むしろ狙って出している釉薬もあるのです。

放っておいて構いません。手入れは何も要らないのです。

欠けた・割れたとき

有田焼 ぐい呑み 染錦金彩牡丹図。金と朱で牡丹を描いたぐい呑み
ぐい呑み 染錦金彩牡丹図/藤井錦彩

使い続けてよい欠けとやめたほうがよい欠け

小さく欠けても、すぐ捨てる必要はありません。判断の分かれ目は場所です。

欠けた場所判断
高台や底の外側使い続けて構わない
胴の外側手が触れて痛くなければ使える
口縁(口が触れる部分)使わない
ひびが貫通している使わない

口縁の欠けは、磁器の場合断面が鋭くなります。唇や舌を切ることがあるため、使わないでください。

ひびが器を貫通している場合は、水が漏れるかどうかにかかわらず使用をやめてください。ひびは温度差で進みます。熱いものを注いだ瞬間に割れることがあります。

市販の接着剤で直さない

割れた器を接着剤でくっつけたくなりますが、食器には使わないでください。理由は2つあります。

1つは食品衛生。多くの接着剤は食品に触れる用途を想定していません。もう1つは耐熱。熱い湯を注げば接着面が緩みます。緩んだ状態で持ち上げると、中身ごと落とすことになります。

飾るだけなら問題ありませんが、口をつける器として直すなら別の方法を選んでください。

金継ぎという選択肢

割れや欠けを漆で接ぎ、継ぎ目に金を蒔いて仕上げる方法です。直した跡を隠さず、景色として見せます。

本漆を使う伝統的な金継ぎは、食器として使える状態に戻せます。乾かす期間を含めて数か月かかりますが、高価な器なら買い直すより安く済むことが多い方法です。

簡易金継ぎのキットも市販されていますが、合成樹脂を使うものは食器としては使えません。飾る前提のものと割り切ってください。

金継ぎそのものと、体験できる教室については、別途くわしくまとめる予定です。

手入れの手間で器を分ける

有田焼 茶碗 白天目本金彩。白い釉薬に本金の絵付けを施した茶碗
茶碗 白天目本金彩/真右エ門窯

ここまで読んで、金彩の器は面倒だと思われたかもしれません。そのとおりです。毎日使う器としては向いていません。

ただ、それは欠点ではなく役割の違いです。器を2つに分けて持つと、どちらも使いやすくなります。

毎日使う器手洗いで使う器
金属の装飾なしあり
レンジ・食洗機使える使わない
洗い方ふつうに洗うやわらかく手洗い
使う場面朝食から晩まで来客・祝いの席

全部を一生ものにしなくて構わないでしょう。むしろ、気を遣う器ばかりだと食卓に出す回数が減ります。

手洗いで使う器

上の4点は、いずれも口縁ではなく胴に金彩・白金彩を施した器です。それでも電子レンジには入れません。金属がどこにあるかは関係がないという、さきほどの話のとおりです。金彩と白金彩(プラチナ)で扱いは変わりません。銀彩も同様です。

やってはいけない手入れ

有田焼 湯呑み 青き明星 陽光 輝く本金。紺の釉薬に本金の絵付けを施した湯呑み
湯呑み 青き明星 陽光 輝く本金/真右エ門窯

熱い器を水に浸ける

いちばん割れやすい場面です。熱い湯を注いだ直後の器を水に浸けると、内と外で温度差が生じて割れます。薄手の器ほど危険です。

逆も同じで、冷えた器にいきなり熱湯を注ぐのも避けてください。ぬるま湯で温めてから使うと、器も長持ちしますし、飲み物も冷めにくくなります。

直火とオーブンにかける

有田焼は直火にもオーブンにも対応していないのです。耐熱陶器(土鍋など)とは作りが違います。

電子レンジで使えるからオーブンも大丈夫だろう、という判断が事故につながります。電子レンジは中身を温める仕組み、オーブンは器ごと高温にする仕組みで、まったく別物です。

重ねたまま長期間しまい込む

年に数回しか使わない器を、重ねたまま何年も置いておく。いちばん下の器に、ずっと重さがかかり続けます。

取り出すときに欠けるのは、たいていこのパターンです。長期保管するなら、重ねずに並べるか、桐箱に入れて別々にしてください。

買う前に知っておきたいこと

最後に、購入後に気づきやすい点を挙げておきます。

  • 手作りのため、同じ品でも寸法や色に個体差があるのです。写真と細部が違うことがあります
  • 金彩・銀彩は経年で少しずつ落ち着きます。使い込むほど輝きは穏やかになるものです
  • 薄手の器ほど口当たりはよく、そのぶん欠けやすいのです。両立はしません
  • 桐箱は器のサイズに合わせて作られたものです。洗って乾かす前に戻すと入りません

どれも欠陥ではなく、手作りの器である以上そういうものだとお考えください。

有田焼をもっと知る

有田焼 湯呑 銀河本白金彩 星天。手に持った紺地の湯呑み
湯呑 銀河本白金彩「星天」/真右エ門窯

器そのものについては、本店のブログでくわしく解説しています。

あわせて読みたい玄関ニッチの飾り方|寸法から選ぶ有田焼の飾皿

まとめ

有田焼 コーヒーカップ 銀河特選。深い青の釉薬とコーヒー豆
コーヒーカップ 銀河特選/真右エ門窯

有田焼の手入れで覚えることは、陶器よりずっと少なくて済みます。

  • 目止めは要らない。水に浸ける必要も、漬け置きを避ける必要もない
  • 金属の装飾があればレンジは不可。口縁でも胴でも同じ。金色に見えても金とはかぎらない
  • 重ねるなら間に布を1枚。傷の原因は高台の畳付
  • 貫入は割れではない。手入れは何も要らない
  • 口縁が欠けたら使わない。直すなら金継ぎ

そして、いちばん大切なことを最後に。器は使わなければ意味がありません。気を遣いすぎてしまい込むより、毎日使える器を選んで、気軽に食卓へ出すほうがずっといいはずです。

私たちは伝統工芸品を扱う事業者として、実際に取り扱う商品の記載を全件確認したうえでこの記事を書いています。器ごとの可否は商品ページに記載していますので、迷われたときはそちらをご確認ください。

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一生ものの有田焼をJTOPIAで

人間国宝・伝統工芸士・皇室献上窯。JTOPIAは、産地・作家と直接取引する有田焼の専門店です。本記事でご紹介した器は、すべて公式オンラインストアでご覧いただけます。

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著者

杉谷 まゆかのアバター 杉谷 まゆか JTOPIA Style 編集長|株式会社イード

JTOPIA Style編集長。LiPro婚活メディアの編集長を務め、複数メディアを運営。LiProでは30を超えるサービスを自ら利用検証し、1,400名以上に聞き取りを実施。印象や伝聞ではなく、実測値と当事者の声で記事を組み立てている。良い面だけを並べず、寸法・価格・条件はきちんと一次情報で確認。産地・技法の記述は伝統工芸品を扱うJTOPIAの監修を経る。

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