「実家から持ってきた掛軸を、そのまま掛けている」「正月に掛けたきり、替えていない」。床の間の壁は、いちど決めるとそのままになりがちです。
掛けるものは掛軸だけではありません。陶板を額に納めた陶額なら、掛けたままにしておけるのです。
この記事では、掛軸と陶額の違いから、大きさと高さの決め方、陶額の掛け方、画題の選び方までをご紹介します。床の間の壁に何を掛けるか決めかねている方は、ぜひ参考にしてみてください。
当メディアを運営するJTOPIAは、有田焼をはじめとする伝統工芸品を扱う事業者です。この記事で紹介する掛け方は、当社が器や陶額を扱うなかで使っている考え方であり、流派の定めた作法ではありません。詳しい編集方針は運営者情報・編集方針をご覧ください。
掛軸と陶額の違い

床の間に入ってまず視線が行くのは、正面の壁です。ここに何もないと、下に何を置いても締まりません。
掛けられるものは2つあります。昔ながらの掛軸と、陶板を額に納めた陶額です。どちらが上ということはなく、違うのは手の掛け方になります。
掛軸|季節ごとに掛け替えて桐箱へしまう
掛軸は、季節に合わせて替えるものです。春に桜、夏に涼しげな水、秋に月、冬に雪。替えることで部屋の空気が変わります。
そのかわり、掛けていない期間は桐箱へしまうことになるのです。紙と裂でできているので、湿気を吸えばしみが出ますし、日に当て続ければ退色します。年に数回の掛け替えと、しまう場所の確保がついてくる器です。
手を掛けられるなら、これ以上のものはありません。季節を部屋に持ち込めるのは掛軸だけでしょう。
陶額|掛けたままにできる
陶額は、焼き上げた陶板を額に納めたものです。紙や裂を使っていないので、掛けたままにしておけます。
日に当たっても退色しませんし、湿気でしみが出ることもないのです。しまう場所も要らないので、押入れの空きを気にせずに済みます。
気をつけるのは重さだけです。当社の陶額は1.7kgから2.3kgあり、同じ大きさの絵画やポスターとは掛け方が変わります。この話は後の章で詳しく書きましょう。
選び分け|手を掛けられるかで決まる
決め手は好みではなく、暮らし方のほうでしょう。年に数回の掛け替えを続けられるなら掛軸、続かないなら陶額です。
掛軸を買ったものの、掛け替えが面倒で正月の一幅だけが掛かったまま。これは珍しい話ではありません。それなら最初から掛けたままにできるものを選ぶほうが、床の間は生きるでしょう。
すでに掛軸をお持ちなら、買い替える前に大きさを測ってください。次の章で書く幅に収まっていれば、そのまま掛けて差し支えありません。
収まらない大きさなら、無理に掛けずにしまっておくのも手でしょう。床の間に対して大きすぎる掛軸は、壁を埋めて部屋を狭く見せてしまいます。
両方を持って、季節の変わり目だけ掛軸に替えるという使い方もできます。床の間の寸法の測り方は、こちらの記事をご覧ください。
あわせて読みたい床の間の飾り方|置くものの選び方と花瓶・壺・香炉の寸法陶額の大きさと高さの決め方

掛けるものが決まったら、次は大きさと高さです。ここを外すと、良いものを選んでも壁から浮いて見えます。
基準になるのは床の間の間口と、座ったときの目線の2つだけでしょう。間口とは、床の間の左右の柱の内側までの幅を指します。
大きさ|間口の3分の1から半分に収める
額の横幅は、間口の3分の1から半分までが目安です。半間(約91cm)なら30〜45cm、一間(約182cm)なら60〜90cm。この幅から外れると収まりが悪くなります。
小さすぎると壁に負けますし、大きすぎると下に花や香炉を置く余地がなくなります。壁面を埋めることが目的ではないので、余白のほうが主役だと考えてください。
高さ|額の中心を畳から140〜150cm

掛ける高さの基準は、額の中心が畳から140〜150cmです。測るのは中心であって、額の上端ではありません。
立って見るときに、ちょうど目の高さにくる位置です。玄関や廊下に絵を掛けるときも、この高さが使われます。
掛軸も同じ基準で構わないでしょう。軸の長さが決まっているので上端の位置は選べませんが、中心がこの範囲に入るかを先に確かめておきましょう。
目線|座って見るので10〜20cm下げる
ただし和室は、座って過ごす部屋です。立ったときの基準のままだと、座ったときに見上げる位置に掛かります。
そこで基準から10〜20cm下げてください。座って見たときに、正面にくる高さになります。
下げるともうひとつ効きます。額と床板の間が詰まるので、下に置いた花瓶や香炉との間が締まって見えるのです。離れすぎていると、掛けるものと置くものが別々に見えてしまいます。
陶額を掛けるときのポイントと注意点

陶額を選んだなら、掛け方をもう一段気にしてください。紙の掛軸とは重さが違うからです。
重さ|1.7kgから2.3kg
当社の陶額を測ると、額の縦31cm・横38cmのもので1.7kg、縦38cm・横48cmのもので2.3kgありました。陶板そのものに重さがあるので、同じ大きさの絵画やポスターとは比べものにならないのです。
この重さが、掛け方を決めます。軽い額なら壁のどこでも掛けられますが、2kgを超えるものは掛ける場所を選ぶことになるでしょう。
下地|柱か胴縁を探して掛ける
石膏ボードにピンを刺しただけでは持ちません。掛けた直後は保っていても、少しずつ穴が広がって落ちます。
下地の位置を確かめて、柱か胴縁のあるところに掛けてください。下地探しの道具はホームセンターで手に入ります。壁を叩いて音の変わるところを探す方法でも見当はつくでしょう。
下地が取れない位置にしか掛けられないときは、ボードアンカーで耐荷重を確保します。陶額の重さに対して余裕のあるものを選んでください。
真下|花瓶や香炉を置かない
掛けたものの真下に、器を置かないでください。落ちれば陶板は割れますし、下の器も無事では済みません。
これは安全のためだけではないのです。縦に伸びるもの同士が重なると、どちらも窮屈に見えます。額の幅の半分ほど、左右どちらかへずらしてください。
花や壺の置き方は、それぞれの記事にまとめました。
あわせて読みたい床の間の花の飾り方|活け方と置く位置・水の管理 あわせて読みたい床の間の壺の飾り方|置く位置・向き・和室での置き方当社で扱う陶額を並べました。99,000円から2,200,000円まで6点です。横幅の小さい順に並べています。京七宝とあるものは、金属に釉薬を焼き付けた工芸です。磁器とは光り方が違います。
幅32.6/高39.8cm陶額 流水登り鯉京七宝・賛工芸363,000円(税込)商品を見る
幅38/高31cm陶額 明星富士真右エ門窯220,000円(税込)商品を見る
幅43/高36cm陶額 吉祥赤富士京七宝・賛工芸148,500円(税込)商品を見る
幅43.8/高54cm陶額 染錦本金龍雲吉祥図福右衛門窯1,100,000円(税込)商品を見る
幅51/高31.5cm陶額 風神雷神京七宝・賛工芸99,000円(税込)商品を見る
幅78/高61cm陶額 染錦本金御所車鳳凰図福右衛門窯2,200,000円(税込)商品を見る画題の選び方
最後は絵柄です。好みで選んで構いませんが、床の間との相性でいえば収まりやすいものがあります。
季節|掛け替えるなら季節の花
掛け替える前提なら、季節の花がいちばん分かりやすいでしょう。桜、菖蒲、紅葉、梅。見た人が季節を受け取れます。
ただし掛け替えの手間は画題の数だけ増えます。四季で替えるなら4幅、月ごとなら12幅。そこまで揃える必要があるかは、先に決めておいてください。
通年|富士と山水は年中掛けられる
1点で通すなら、季節のない画題を選んでください。富士、山水、龍、鳳凰。どれも特定の季節を指さないので、年中掛けたままにできます。
陶額を選ぶ方には、こちらのほうが向いています。掛けたままにできる利点を、画題のほうでも生かせるからです。
床の間以外|玄関や洋室には通年の画題が向く
陶額が使えるのは床の間だけではありません。玄関のニッチにも、洋室の壁にも掛けられるのです。
玄関は人を迎える場所なので、明るい画題が向きます。赤富士、鶴、鯉。季節を映す場所ではないので、通年で掛けられるものを選ぶほうが扱いやすいでしょう。洋室なら、色数の少ないものが壁から浮きません。
大きさは床の間より小ぶりなものを選んでください。玄関のニッチなら、壁の幅の3分の1までに収めると窮屈に見えなくなります。
あわせて読みたい玄関ニッチの飾り方|寸法から選ぶ有田焼の飾皿まとめ
床の間の壁に掛けるものは、掛軸か陶額の2つです。年に数回の掛け替えを続けられるなら掛軸、続かないなら陶額。ここが最初の分かれ目になります。
- 額の横幅は間口の3分の1から半分。半間なら30〜45cm、一間なら60〜90cm
- 陶額の高さは額の中心を畳から140〜150cm。座って見るので10〜20cm下げる(掛軸は釘から吊るので軸の長さで決まります)
- 陶額は1.7kgから2.3kg。柱か胴縁のあるところに掛ける
- 掛けたものの真下に器を置かない。額の幅の半分ほど左右へずらす
- 掛け替えないなら、富士や山水のような季節のない画題を選ぶ
壁が決まると、下に置くものも決めやすくなります。先に掛けるものから選んでください。花や香炉はそのあとで構いません。
陶額や飾皿をお探しでしたら、本店の一覧もご覧ください。


